風の旅人 復刊第5号(第49号) いのちの文(あや)*完売

 *本のサイズ(横225mm,縦298mm,厚さ10mm)


「一個の有機体は、それがそれ自身であるためには全宇宙を必要とする。」

     A.N. ホワイトヘッド

 

 いのちの働きや展開は、まさに”アヤ”そのものです。

 いのちの働きは、食べるものと食べられるものの関係を無限に続けながら、一つの死(消滅)の上に別の生(誕生)が乗っかかる形で無限に展開していきます。

 全宇宙からすれば一個の有機体の存在意義は決して大きくないかもしれませんが、「一個の有機体は、それが存在するためには全宇宙を必要とする。」というアルフレッド・ホワイトヘッドの言葉のとおり、そこには宇宙の全歴史が凝縮しています。

 一人の個人は、この宇宙の多様な働きが合わさったものとして存在しており、宇宙の働きが謎であるかぎり、一人ひとりの存在も謎です。

 


ロングインタビュー  9ページ

いのちのはずみー生存の美学ー 哲学者:鷲田清一 

 自由、他者との関係性、そして偶然性と必然性の三つを柱に話をうかがいました。それらのことを踏まえて”学び”について掘り下げ、最終的には、1人ひとりがおのれの寂しさとどう向き合っていくかという哲学。正しい答ではなく、健やかに生きるためのセンスを、考えに考え抜いていきます。



不二曼陀羅 写真・文/大山行男   16ページ

 五大皆有響    十界具言語   六塵悉文字    法身是実相  (空海『声字実相義』)



森と心  写真・文章/紀成道 16ページ

 人口あたりの病院や病床の数が、世界の中で突出して多い日本の精神医療は、どこか閉鎖的で、社会との接点がない為に誤解も生じています。森林療法は患者をケアするだけでなく、健常者が持つ障がいへの誤解を解く出会いを提供してくれるかもしれません。


2002年
2002年
1987年
1987年

東京模様 写真/鬼海弘雄 文章/今福龍太 22ページ


 戦後、東京の街は、めまぐるしく変化してきたという共通認識があります。しかし、実際には、30年前の写真と今の写真を横に並べても同じ時代に見えるということもあります。

「高度成長」、「バブル」、「失われた20年」・・そして、もしかしたら「経済再生と愛国の時代」となってしまうこともあるように、時代を一括りにするスローガンは大きく変わるかもしれません。しかし、標準化や画一的なスローガンになりにくい、1人ひとりの胸中に宿る「幸福観」とか、「愛着」とか、「人生の折り合いの付け方」、すなわち、いのちの文(あや)は、そんなに変わるものだとは思えません。ただ、どちらを基準に生きるか。自分の中ある感慨ではなく、世間の風潮を基準にしてしまう人があまりにも多いと、世の中は、一斉に同じ色に染まってしまうでしょう。

 





チベット 天と人のあいだ  写真・文/有元伸也  16ページ

標高3000m〜5000mの過酷極まりない世界で、信仰を支えに、満ち足りた表情で生きる人々がいます。彼らと向き合っていると、いのちの力は、逆境の中で、よりいっそう高められるように感じられます。使い古された言い回しですが、「身なりは貧しくても心は豊か」という言葉は、どんな時代でも色褪せることがないように思います。物質的な豊かさを目指したり、政府が国民に強要する正しい生き方ではなく、1人の人間として清らかな生き方というものが基準になる時代が、また巡ってくるのではないでしょうか。



里山 写真/今森光彦 文章/石田秀輝  18ページ


自然か人工か、という二項対立ではなく、その中間ポイントがあります。人間が関与していくことで自然もまた健やかになるように。たとえば伸ばし放題の髪の毛が自然で健やかとは限りません。森だって、人間が時おり間伐することで、光が入り込み、いのちを育むうえで最適な状況になります。

同じ人工でも、人間が都合良く自然を利用して破壊することもあれば、人間が自然の繊細な関係性を読み取り、その関係性を損なわずに生かす手入れの発想があるのです。里山は、人間と自然の中間地帯として、自然の手入れという人間の深い智慧と実践の舞台と言えます。



福島の祈り 写真・文章/大石芳野 16ページ

 

  2011年3月の福島原発事故から、まもなく4年。原発政策に対して賛否を問う抽象的な議論は行なわれるものの、なし崩し的に、経済の論理に飲み込まれていきます。観念で危険性やメリットを論じ、天秤にかけると、生きていく為にはお金が必要という経済の論理が勝りがちなのです。

 いのちにとって本当は何がもっとも大事なことかということを考え、それをベースに対話がなされないと,道は変わらないでしょう。この特集では、福島で生きる子供達に焦点をあてています。子供達は未来の象徴であり、子供達のいのちが健やかに育まれ、その健やかさが受け継がれていく社会というものはどんなものか、お金の為だけに生きてきた大人が、少し立ち止まって、真剣に考える時期にきているのではないでしょうか。

 

文章

地球上に知的な生命体はいるのか?

「マハーバーラタ」を創る。

「世界の中心」という錯覚の由来

無邪気な耳の話

リリ

自然との折り合いがつくる新しいかたち

綾なす路地の夢想

マチガンガの循環世界

 虚無のさなかにあって

生命と全体性

 

 

茂木健一郎  

小池博史   

蛭川立    

姜信子    

田口ランディ

石田秀輝  

今福龍太

関野吉晴

佐伯啓思

村瀬雅俊



充電期間を経て、2015年4月1日に、復刊第5号が発行されます。そのご予約を承らせていただきます。書店での販売はございません。発行後、直接、ご自宅にお送り致します。

 復刊第4号は、『死の力』という、ある意味で究極のテーマで編集しました。次号の復刊第5号からは、「いのちの現実世界」を見つめて編集していきたいと思います。この過酷な現実を単純化してわかったつもりになるのではなく、何をもって幸福か不幸かわからない複雑精妙な「いのち」を、しみじみと味わい尽くすような生き方を模索していきます。どうぞよろしくお願い致します。